妊娠や出産をきっかけにして嫌がらせを行う「マタニティーハラスメント」(マタハラ)が社会問題となってしばらくたちましたが、その対策が一歩進みそうです。
こちらのニュース。
妊娠や出産を理由にした嫌がらせであるマタニティーハラスメントをめぐり、厚生労働省は30日、妊娠や出産、復職などから1年以内の降格や契約打ち切りなどの不利益な取り扱いは、原則として男女雇用機会均等法などに違反すると判断することを決め、公表した。
朝日新聞デジタル 2015年3月31日
これによって、他の理由を後付けしても、不利益取り扱いは原則的に違法と見なされることになります。
マタハラが問題となり、ブラック企業として取り上げられたケースで記憶に新しいのは、「たかの友梨ビューティクリニック」での一件。昨年、妊娠中の従業員が負担の軽い業務への転換を求めたにもかかわらず会社側が拒否。未払い残業代の支払いとあわせて提訴するに至りました。その後、社長が組合活動に圧力をかけるといった騒動に発展しましたが、最終的には和解し、子育て支援制度を導入したと報道されています。
「たかの友梨ビューティクリニック」を経営する不二ビューティ(東京)と同社の従業員が加入する労働組合のエステ・ユニオンは19日、組合員向けに、子育てと仕事の両立支援制度を導入する労使協約を結んだと共同発表した。
組合員は希望すれば、子どもの小学校入学(法律では3歳未満)まで短時間勤務制度を使えるようになり、小学校在学中(同入学前まで)は残業を免除される。勤務シフトづくりも、組合員の子どもの休みに合わせる配慮をする努力もするという。
朝日新聞デジタル 2015年2月19日
このように、会社と労働組合が協定を結び、解決に至ればよいのですが、これまで多くの女性労働者はストレスが胎児に与える影響を考え悩み、泣き寝入りさせられてきました。
マタハラの根本には、人員が慢性的に不足させられていること、何よりも仕事を優先し、仕事と家庭生活の両立が成り立たないことが挙げられます。
妊婦に対して業務を軽減する分は、事業主は増員しなければならないにもかかわらず、それを放置して他の労働者の負担を増加させることで、職場全体に「妊娠が迷惑」という雰囲気をつくっています。子どもが体調を崩したときに、親は対応するため職場を離れますが、その分を他の労働者に押しつけることで、小さな子どもを持つ女性労働者が面倒だという状況もつくられます。このことは、女性に対する採用や昇進の差別にもつながります。
これは間違いです。
少し前は、子どもを授かったら、女性は家庭に入るものとされていたかもしれません。子どもは母親が育てるものとされていたかもしれません。しかし、今は違います。性別にかかわらず、仕事も家庭も子育ても大切です。生まれつきの性によって、どれかを切り捨てなければならない理由はありません。
今回の通達は、一歩前進です。しかし、根本的な解決になるでしょうか。
根本的に解決するためには、女性労働者に限らず、すべての労働者にとって残業が当たり前、過重な長時間労働が当たり前の状況が押しつけられていることを正す必要があるでしょう。仕事と家庭の両立が誰にとっても当たり前にすることがもっとも求められるはずです。