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2015年3月22日日曜日

地方と都市の格差は、最低賃金の水準格差によってつくられる

都会

4月の地方選を控えて、景気動向や雇用問題が取り上げられるケースが増えています。

今回は、地方と都市の賃金格差について見てみましょう。
そして、それを生み出しているのがいったい誰なのか、突き止めたいと思います。



こちらは朝日新聞の記事です。

厚生労働省によると、2014年の残業代やボーナスを除く平均賃金は、全国平均で月29万9600円となり、前年より1・3%増えた。都道府県ごとにみると、大企業が集まる東京が37万7400円とトップで、神奈川、大阪、愛知と「大都市圏」が続いた。
平均賃金が最も安いのは青森の22万6600円。東京より4割ほど少ない。賃金が高い大企業の事務所や工場が少なく、前年より2・4%下がった。
朝日新聞デジタル 「格差問題、地方と都市で賃金や雇用に違いは?」 2015年3月22日

ここだけだと、地方には大企業が少ないから賃金の平均が低く、格差が生じているというふうに読めませんか?

同種の職業なら同じ賃金単価であるべきなのに、それをさせない人たち


たしかにそういう面がないとは言いません。ですが、そもそも大企業だから賃金が高く、中小企業だから賃金が低いという構造は間違っています。同じ仕事をしていれば、同じ賃金(同一労働同一賃金の原則)は、ある会社の中だけに適用されるものではなく、会社の枠を超えて適用されるべきものです。同じ種類の仕事をしている大企業と中小企業の労働者は、同一単価であるべきです。

しかし、現実に違っています。これは、大企業と中小企業という会社間の力関係を不当に利用した「下請けいじめ」があるからです。大企業である元請けが、下請けである中小企業に対して、請負単価を過剰に切り下げることを行っています。リーマンショックの頃は、「単価が6割下げられた」という話を聞きました。もちろん、引き下げられた側は、もうけなしです。ですが、たとえもうけなしでもそれを乗り越えれば取引が続き、それでもうけを上げるためと思って無理な注文でも引き受けざるを得ません。そして、一度下げた単価は、二度と上げることありません。

何故このようなことができるのかと言えば、中小企業の労働者は低く抑えた最低賃金に近い金額で働かせているからです。

最低賃金を引き上げさせたくない本当の黒幕


最低賃金の話が出てきました。最低賃金は、都道府県ごとに決められており、それ以下で働かせてはいけない時間単価です。たとえば、現在の新潟県の最低賃金は時間給715円です。
「中小企業が大変だから最低賃金を急には上げられない。」
経営側はよくこんなことを言います。ですが、これは半分本当で、半分ウソです。最低賃金のことで個人経営者に近いような方にご意見伺うことがあります。
ある小売関係の経営者の方はこうおっしゃいました。
「払えるなら払いたいが、売り上げがなかなか伸びない。」

これはウソではないでしょう。
消費税が上がり、財布のひもは締まっています。売り上げがそうそう伸びないのも頷けます。
もちろん、そういう中でも営業努力は必要ですが、消費税を上げてみたり、国民の所得を減らすような政策をやめれば、この悩みは解消する方向へ動くはずです。そして、全員の懐が暖まれば、自然と消費は拡大します。売り上げも伸びる方向へ動くでしょう。

お気づきでしょうか。
最低賃金を上げて欲しくない人は、確かに直接的には中小企業の経営者かもしれませんが、本当はその影で甘い汁を吸っている人たち、つまり大企業なのです。
下請け単価を切り下げるためには、最低賃金を低く押さえ込んでおかなくてはいけない。
法人税を下げるためには、消費税を上げたり労働者の所得を下げるような政策を行わせなければならない。
このためです。

ひとつ考えてみてください。
最低賃金が、都道府県ごとではなく、全国一律になったらどうでしょうか。
大企業が地方に進出し、自治体から優遇措置をもらい、比較的安い賃金と不安定な非正規雇用で人手をかき集めて、売り上げを本社がかっさらうことにうまみがなくなります。これによって、地方から都市へ人口が流出することも止められます。将来消滅するかもしれない自治体というのが流行っていますが、それが本当だというのなら、政策的には、いますぐ最低賃金を全国一律にすべきでしょう。もちろん、低い方にあわせるのではなく、高い方にあわせるのです。

最低賃金を全国一律にして抜本的に引き上げれば大概のことは解決する


最低賃金を全国一律にすべきです。そして、抜本的に引き上げましょう。そうすれば、大概の問題は解決します:

  • ワーキングプアが解消される。
  • 将来の無年金者、低年金者が少なくなり、生活保護世帯数も減少する。
  • 国内消費が伸びる。
  • 特に小売等の産業の売り上げが伸びる。
  • 地域間格差が少なくなる。
  • 地域からの人口流出が止まる。地域の担い手が生まれる。
  • これまで低賃金だった産業に労働者が定着する。
  • 地方自治体の税収が増加する

もちろん損をする人がいます。

これまで、地方に進出して、自治体から優遇措置を受け、比較的安い賃金で人をかき集めてきた会社は、さようなら。
最低賃金付近に賃金を抑えることで、下請けいじめを可能にしてきた元請けは、それができなくなります。残念でした。
最低賃金を引き上げるために中小企業対策の予算をつけるので、それをほしがっていた誰かさん。さようなら。

都会には大企業が多いから平均賃金高いよね、だから地方から都会に出てきてねでは日本全体として困ります。
なにより、私は新潟県民として困ります。
抜本的な対策のためには、最低賃金の引き上げしかありません。