労働条件ではなくて、仕事にやりがいをもっと持て-。
そんな記事が出ました。
一見最もですが、果たしてそうでしょうか。
私はそう思いません。
おそらく、その会社はそこそこまでは行けても、一流にはなれません。
中堅商社の採用担当者はこう言います。
「学生の中には『勤務時間は何時間ですか、残業はありますか』と聞いてくる人もいます。労働条件のほうが優先度が高く、仕事に対する情熱を感じない学生が非常に多い。そんな学生に労働の権利だけを断片的に教えるのは危険だと思います。働くとはどういうことか、働く喜びや意義を大学で教えてほしいですね」
PRESIDENT Online 「仕事内容」より「労働条件」ばかりを聞く学生はいらない 2015年8月5日
これは、働くということをどういうことか本当はわかっていない証拠です。
たとえば、職場ではなくて、家庭での作業を考えてみましょう。
まったくお金にはなりません。義務的に行っていることもあるかもしれませんが、でも、趣味にするようなこともあるはずです。
それは、一から十まで、自らの頭で考え、自ら材料を調達し、自らの道具で、自ら利用するものを生み出すような、そういう生産活動(生み出すものは物品だけとは限りません)です。
でも、会社はどうでしょう。
組織の中の一部です。
自分のものにはなりません。最終的にできたものは会社のものです。
根本的にずれがあります。
また、労働条件は、使用者と労働者が等価交換で行った約束事です。
そんなものすら守れないようでは、商売上の約束だって守れるわけがありません。
あるいは、労働者との約束は守らないけど、取引先との約束は守るというなら、それは相手を見て態度を変えているのであって、人間として不誠実です。
しかも、記事の続きにはこうあります。
「もちろん、社員のことを考えずに悪意をもって働かせている企業は問題だが、労働法を順守していない企業は山ほどあります。うちのような中小ベンチャーは、法律ギリギリのラインで働かなければ、それこそメシのタネがなくなってしまうのが現状。労働条件がよいから入りたいという学生はこちらから願い下げです」
悪いことをしている会社がたくさんあるから、自分たちだっていいじゃないかという言い分。
これでは、お話になりません。
働き蜂みたいな労働者を尊んでいるようですが、それではまったく効率がよくありません。長期休暇を取らないと仕事で成功しないことがわかったのとおり、仕事と生活にはメリハリをつけなくてはなりません。そのためには、長時間労働はもっとも避けるべきなのです。
ですから、一番最初にあるように、残業時間はどれぐらいなのか聞いてくる学生は優秀です。
それをいらないといいます。
つまり、この会社は、そこら辺にあるような会社の一つにはなれるけれども、これぞという会社にはなれないということ。
そんな会社、いらないでしょう。