政府がまたトンデモなしくみを検討をしようとしています。
政府の成長戦略に盛り込まれた労働紛争を解決する新たな制度として、厚生労働省は、解雇を巡る争いを金銭で解決する仕組みについて、今月中にも専門家らを集めて検討を始めることを決めました。
NHK 解雇巡る争い 金銭で解決する仕組み検討へ 2015年10月18日
かねてから規制改革会議は、「解雇の規制が強すぎる」などと言いがかりをつけて、経営者の言いなりにならない労働者を会社から追い出そうと画策していました。それがまたまた出てきた格好です。(朝日新聞 「不当解雇の金銭解決、改革会議が提言 政府は導入検討へ」2015年3月26日など)
労働者の中にも、「もう会社にも戻りたくないし、お金がもらえるなら」と思う人もいるかもしれません。
しかし、その金額はわずかです。
不当解雇をめぐって、労働局で行われる「あっせん」の場合、和解金は数十万円程度。つまり和解金は数ヶ月分でしかありません。転職準備をしていたら、すぐになくなってしまう金額です。おそらく、このような低額をベースに検討されるものと思われます。
経営者側からは「いまだって金銭解決してるじゃないか」と言ってくるかもしれません。
たしかに、不当解雇に対して、個人紛争あっせん制度や労働組合による団体交渉、労働審判など、さまざまな解決方法があり、そこで少なくない件数の金銭和解が行われています。
ただ、それは生活を支えることを優先し、長期間かかることを避けた結果として、労働者側はやむなく金銭和解しているのであって、好き好んで金銭和解しているわけではありません。
それに、いまもそのような仕組みがある以上、それを新たに制度化する必要は、少なくても労働者側から求める理由はありません。
このようになると、会社は言うことを聞かない労働者、働きぶりの悪い労働者を、不当解雇だろうと何だろうと解雇してしまい、カネを払って解決という方法を採るでしょう。おそらく、経営者側の理由はそれです。
解雇は簡単にできません。
そうでなくては、社会が壊れます。
解雇が簡単にできると労働条件がたやすく切り下げられ、労働者の生活が危うくなります。労働者の労働条件が全体に低下すれば、社会の活力は失われます。社会保障を利用する人が増加、社会保障費も増えます。
もちろん、そこまでいかないかもしれません。そこまでいかないことを願っています。どこかのブラック企業の一社長が思いつくぐらいなら、まだその程度で済むかもしれません。ですが、基本的には、すべての会社が同じように行動するのが、この世の中なのです。
思い出してみてください。
リーマンショックの時。
そこまでひどくないにもかかわらず、とりあえず派遣切りした会社がどれだけ多かったことか。
とりあえず、一人の労働者として考えたとき、会社と何かのトラブルを抱えたら、いともたやすくクビになるのでは、やる気も低下しますよね。