ブラックバイトについて、厚生労働省が実態調査を行ない、その結果を発表しました。
学生がアルバイト先で不当に働かされる、いわゆる「ブラックバイト」の問題について、厚生労働省が初めて行った実態調査の結果が9日に公表され、6割の学生が何らかのトラブルを経験するなど問題が広がっていることが明らかになりました。
NHKニュース ブラックバイト 初の実態調査で6割がトラブル経験 2015年11月9日
それによれば、
・法律で定められた労働条件の書面での提示を行っていなかったケース 58.7%
・口頭でも具体的な説明がなかったケース 19.1%
となっています。
契約書は必須
「法律で定められた労働条件の書面での提示」とは、契約書や労働条件明示書などと呼ばれ、労働時間、賃金、休暇など、使用者が必ず文書で明らかにしなければならないものです。これは、あとで労使間で言った、言わないで争わないようにするための決まりです。
つまり、このルールを守らないということは、いたずらに労使紛争を起こしてくださいと言っているようなものです。
口頭でも具体的な説明がないケースは、もしかしたらもっとあるかもしれません。
たとえば、有給休暇などの休暇。
労働条件明示書を示さない約6割の会社が、口頭で有給休暇を説明するとは考えにくいのではないでしょうか。
(参考)書面で明らかにしなければいけない労働条件
・契約期間・就業場所や仕事内容
・始業・終業時刻
・所定労働時間を超える労働の有無
・休憩時間・休日・休暇
・賃金(退職金・賞与等の手当を除く)の決定、計算・支払方法、締切・支払期日
・退職(解雇事由含む)
・その他、退職金・賞与、安全衛生、職業訓練、休職等の定めがある場合
シフトも労働条件のうち
職場でのトラブルについて複数回答で尋ねたところ、「採用時の合意以上の日数、勤務を入れられた」が14.8%、「一方的に急な勤務変更を命じられた」が14.6%、「準備や片づけの賃金が支払われなかった」が13.6%などとなっています。こうしたトラブルを経験した人は全体の60.5%に上り、アルバイト先で不当に働かされる「ブラックバイト」の問題が広がっている実態が明らかになりました。
労働時間も労働条件のうちです。
週3日と決めたら、それは労働条件です。詳細は「シフトによる」としたとしても、週3日は週3日として決まりです。労使のどちらかが相手に断りなく一方的に変えられるものではありません。
学生バイトともなれば、学業との兼ね合いを考慮して決めたシフト量です。
簡単に増やされても困るでしょう。
また、準備や片づけも、仕事に必要な作業ですから労働時間です。
これにかかる賃金を支払わないのは、違法です。
こうしたトラブルに巻き込まれた学生は、全体の6割を超えました。
ブラックバイトがひろがっていることがよくわかる調査です。
ブラックバイトは学生だけの問題ではない
「ブラックバイトだなんて、いまどきの学生は大変だね」という他人事で終わる話ではありません。
これは、労働者全員にとっての問題です。
つまり、あなたの問題です。
採用時に労働条件を文書明示しないというのは、なにも学生にかぎったことではないでしょう。
おそらくどの従業員に対しても、その会社ではそうしているはずです。
このような会社は、言った、言わないで、いつでも労使紛争が起きます。
口頭でも言わず、曖昧にしているというのでは、なおのこと。
「採用の時には聞いていなかったのに」と入社して数ヶ月後に相談ということもあり、そんな職場では会社に対する不信感が生じます。
急なシフト変更についていえば、学生を学生扱いできるほど余裕のない職場だという意味です。
学生といえば、バイトをするために学生をやっているわけではないのですから、学業優先が世間の常識です。
それなのに、学業との両立ができなくなるような働かせ方を一方的に強いるというのは、世間の常識に構っていられない、それだけ人手が不足しているという意味。
一緒に働いている人たちも余裕はないはずです。
つまり、ブラックバイトが広がっているということは、それだけ劣悪の労働環境が広がっているということです。
ブラックバイトのひとつの問題点はここにあります。
学生を、学生扱いできるだけの余裕を職場に生み出すということは、裏返せば有給休暇を取得できる余裕であったり、長時間残業をしなくてすむ余裕であったりします。
労働組合としては、ブラックバイトをなくすことと同時に、長時間労働をなくす、休暇を取得しやすくすることも一緒に進めていきたい。