ハローワークがブラック企業の求人を拒否できるようにする-
こんなニュースが流れました。
過酷な労働を強いるブラック企業対策を強化するため、厚生労働省は五日、残業代不払いなどの違法行為を繰り返す企業の新卒求人をハローワークで受理しない制度を創設する方針を固めた。一月召集の通常国会に提出する若者向け雇用対策法案の柱とする。民間の職業紹介は、規制の対象外。ブラック企業の規制の第一歩として考えることもできるのですが、これは政府による単なる「ガス抜き」ではないかと考えるのです。
東京新聞 2015年1月6日
以下、その理由を述べたいと思います。
私たちのイメージするブラック企業と政府の指定するブラック企業は異なる
実はすでにツイートしていますので、まずはそれをご紹介します。
ブラック企業の求人を受け付けないとするニュースについて思うところを連投したいと思います。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
厚労省はブラック企業対策として相談対策を強化したことがありました。しかし、実際にはサービス残業(不払い残業)や過労死を招きそうな長時間労働についての指導だったようです。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
サービス残業は、間違いなく違法です。ですから労基署も迷うことなく指導することが可能です。過労死を招くような長時間労働についても厚労省基準がありますから、36協定をオーバーすれば指導、範囲内でも助言は可能でしょう。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
ただ、みなさん「ブラック企業」と聞いたとき思い出す企業はどんなところでしょうか。具体的な企業名を挙げるならば、ワタミとか、すき屋ではないでしょうか。では、ワタミやすき屋はいったい何をしたのでしょうか。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
ワタミについては従業員の過労死裁判が知られています。現実に従業員が亡くなってしまいました。また「365日24時間死ぬまで働け」といった文書が出てきました。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
すき屋については、「ワンオペ」に代表される従業員酷使の状態から人手不足となり店舗閉鎖に追い詰められました。その以前には、アルバイトに対する残業代不払い裁判もありました。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
「ブラック企業」と言ったとき、たしかにサービス残業は一つの特徴ですが、それだけではないでしょう。ひどい新人研修が問題になった企業もありましたが、従業員を人扱いしない、使い捨てにするという点に批判が集まっているのです。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
では、厚労省は「従業員を人扱いしない、使い捨てにする」という点をどのように評価できるでしょうか。残念ながらそれはできないでしょう。おそらく残業代不払いを繰り返すような労基法違反を繰り返す悪質な企業を政府公認ブラック企業と名付けるのでしょう。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
つまり、私たちがブラック企業という言葉を聞いたとき思い浮かぶ会社のイメージと政府が指定するブラック企業は完全には一致しないということです。前出の東京新聞の記事の続きでは、
新制度では、残業代の不払いなど労働基準法違反を繰り返す企業のほか、セクハラなどの男女雇用機会均等法違反や、育児休業を取得させないといった育児・介護休業法違反で企業名を公表された場合に、新卒求人を不受理とする見通し。とあり、当然と言えば当然ですが、法律に違反し、企業名が公表されるような悪質な場合だろうとのことです。
ブラック企業対策プロジェクト事務局長の嶋崎量弁護士は、「残業代不払いのある企業」のほかに、「募集要項とは異なる労働条件で働かせている求人」も調査の上、制限すべきだと述べています。
ハローワーク「ブラック企業求人拒否制度」に期待される具体的な制度とその意義
いわゆる「カラ求人」であったり、正社員の募集だと思ったら、面接で契約社員だと言われたなど、こういった失業者の弱みにつけ込む方法も規制すべきです。
まずは、「これでブラック企業の求人がハローワークから消える」と思ったら、実は違っていたということになりかねません。
政府のブラック企業規制はポーズだけ
最初から全部は規制できないから、第一歩として評価してもよいのではないかとも考えられるでしょう。しかし、本当にそうでしょうか。政府のブラック企業規制についてはポーズだけで、あくまで「ガス抜き」なのではないかと考える理由は、先ほどのツイートの続きです。
しかし、国民が本当に願っていることは、人扱いしない働かせ方をやめさせることにほかなりません。いまの政府が進めている派遣法の拡大などは逆方向です。政府そのものがブラック企業推進なのにブラック企業規制とは名ばかりです。本当に正すべきは、まず政府の姿勢です。
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
政府が、労働者が人として当たり前のくらしができるような政策をとる。そして、企業が労働者を人として扱うように規制する。そうしなければ、ブラック企業はなくなりません。
(以上です)
— にいがた青年ユニオン (@seinenUnion) 2015, 1月 6
本当にブラック企業を規制するのであれば、労働者保護のための規制を「岩盤規制」などとは呼びません。残業代ゼロ法案も不必要ですし、不安定な働かせ方を強いる労働者派遣を拡大するようなことにはならないはずです。片手でブラック企業の求人を規制すると言い、もう片方ではブラック企業を合法化しようとしているのが、今の政府の姿です。
この場合、どちらの手が偽物なのでしょうか。
両方の手を動かしている頭脳が偽物です。
政府が本当にブラック企業を規制するというのなら、労働者を人としてないがしろにするような政策をやめるべきでしょう。もちろん、自然にそうなるわけではありませんから、私たちの運動でそうさせることが最も重要です。